レコーディング機材が増えてくると、悩みの種になるのが設置場所と複雑になりがちな配線です。
今回は、ハンドルとキャスターを備えた6Uラックケース「SKB R6UW」へ、Antelope Audio Orion Studio、Rupert Neve Designs 5211、SSL PURE DRIVE OCTOを組み込んでいきます。
最終的な入力構成は、SSL PURE DRIVE OCTOの8チャンネル、Rupert Neve Designs 5211の2チャンネル、Orion Studio内蔵マイクプリの2チャンネルを合わせた合計12チャンネルです。
放熱スペースや機材の重量バランス、ADATとワードクロックの接続、MOGAMI 2534を使ったXLRケーブルの自作まで、今回のラックシステムを詳しく紹介します。
目 次
SKB R6UWとは?

今回使用するラックケースは、SKBの6Uローリングラック「SKB R6UW」です。
とにかくデカイ!!
バスドラムよりデカかった汗
6U分のラックスペースを備えた19インチラックケースで、伸縮式のハンドルとキャスターが装備されています。
オーディオインターフェースやマイクプリアンプを複数台組み込むと、ラック全体の重量はかなり重くなります。しかし、SKB R6UWならキャスターを使って転がせるため、スタジオ内での配置換えや別室への移動もスムーズです。
前後には取り外し可能なカバーがあり、移動中は機材のフロントパネルと背面端子を保護できます。使用時にはカバーを取り外せるので、機材の操作や配線にも簡単にアクセスできます。
ケース本体は衝撃に強いロトモールド構造。大切なオーディオ機器を保護しながら、録音システム全体をまとめて持ち運べるのが、このラックケースを選んだ大きな理由です。

6Uラックの配置を決める
機材を取り付ける前に、6Uのラックスペースをどのように使うか決めます。
今回は、一番上を1段目として次のように配置しました。
| ラック位置 | 装着する機材 |
|---|---|
| 1段目 | MIDDLE ATLANTIC VT1 1U放熱パネル |
| 2段目 | Antelope Audio Orion Studio |
| 3段目 | Rupert Neve Designs 5211 |
| 4段目 | MIDDLE ATLANTIC VT1 1U放熱パネル |
| 5〜6段目 | SSL PURE DRIVE OCTO |
6Uすべてをオーディオ機器で埋めるのではなく、1段目と4段目にはMIDDLE ATLANTIC VT1 1U放熱パネルを装着します。
VT1は、細かな通気孔を備えた1Uサイズの放熱パネルです。ラック内部の空気を逃がすスペースを確保しながら、空いている部分をきれいに仕上げられます。
今回の配置では、Orion Studioの上に1U、5211とPURE DRIVE OCTOの間に1Uの放熱スペースを設けました。
複数のオーディオ機器をラックへ収めると内部に熱がこもりやすくなります。長時間のレコーディングでも安定して使用できるように、放熱を考えた配置にしています。
ラックへオーディオ機器を装着
配置が決まったら、実際にオーディオ機器をラックへ装着していきます。
まずは、ラックの5〜6段目へ2UサイズのSSL PURE DRIVE OCTOを取り付けました。
重量のある機材をラックの下側へ配置することで、全体の重心を低くできます。ハンドルを伸ばしてキャスターで移動するときにも、ラックが安定しやすくなります。
続いて、4段目へMIDDLE ATLANTIC VT1を装着。その上の3段目へ、1UサイズのRupert Neve Designs 5211を取り付けます。
2段目には、今回の録音システムの中心となるAntelope Audio Orion Studioを装着しました。
最後に、最上段となる1段目へ、もう一枚のMIDDLE ATLANTIC VT1を取り付けます。
これで6Uすべてが埋まりました。
ブラックを基調とした機材と放熱パネルがSKBのラックケースにきれいに収まり、見た目にも統一感のある仕上がりになっています。

★生音サンプル
・Rupert Neve Designs5211
スネアトップ、バスドラインマイク
・SSL Pure Drive Octo
OH、スネアボトム、バスドラアウト、タムマイク
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システムの中心となるOrion Studio
今回のラックシステムの中心となるのが、Antelope Audio Orion Studioです。
Orion Studioにはアナログ入力だけでなく、ADATをはじめとするデジタル入出力も搭載されています。そのため、外部マイクプリアンプやADコンバーターを追加しながら入力チャンネルを拡張できます。
今回の構成では、SSL PURE DRIVE OCTOをADATで接続し、Rupert Neve Designs 5211をアナログで直接接続します。
さらに、Orion Studio本体に搭載されているマイクプリも2チャンネル使用します。
- 1〜8ch:SSL PURE DRIVE OCTO
- 9〜10ch:Rupert Neve Designs 5211
- 11〜12ch:Orion Studio内蔵マイクプリ
これで、合計12チャンネルのマイク入力を使ったレコーディングが可能になります。
SSL PURE DRIVE OCTOを1〜8chへADAT接続

SSL PURE DRIVE OCTOは、8チャンネルのマイクプリアンプとADコンバーターを搭載した2Uサイズのユニットです。
各チャンネルには、クリーンな音質で録音できるClean、SSLらしい倍音を加えるClassic Drive、より積極的な倍音構成を持つAsymmetric Driveの3種類のモードが用意されています。
今回はPURE DRIVE OCTOの8チャンネルを、Orion Studioの1〜8chとして使用します。
両機の音声接続には、ALVA OK0200PRO(BL)オプティカルケーブルを使用しました。

PURE DRIVE OCTOのADAT OUTとOrion StudioのADAT INを接続し、SSLでAD変換された8チャンネルの音声をOrion Studioへ送ります。
ADATの信号経路
マイク ↓ SSL PURE DRIVE OCTO INPUT 1〜8 ↓ SSL内蔵ADコンバーター ↓ ALVA OK0200PRO(BL) ↓ Orion Studio ADAT INPUT ↓ Orion Studio 1〜8ch ↓ DAW
ADATを使えば、8チャンネル分のデジタル音声を1本のオプティカルケーブルでまとめて送れます。
8本のアナログケーブルを個別に配線する必要がないため、ラック背面をすっきりまとめられるのも大きなメリットです。
ADAT使用時の注意点
1ポートで8チャンネルを使用できるのは、一般的に44.1kHzまたは48kHz動作時です。88.2kHz以上ではS/MUXによって使用できるチャンネル数が減るため、録音時のサンプルレートに合わせて設定する必要があります。
Orion StudioとSSLをワードクロックで同期

ADATのようなデジタル接続では、接続した機器同士のデジタルクロックを同期させる必要があります。
Orion StudioとSSL PURE DRIVE OCTOのワードクロック接続には、CANARE D 3C005A-S ORANGEを使用しました。

BNC端子を備えたワードクロックケーブルで両機を接続し、どちらか一方をクロックマスター、もう一方をスレーブとして動作させます。
クロックマスター側(ORION STUDIO)のWORD CLOCK OUTから、スレーブ側(SSL PURE DRIVE OCTO)のWORD CLOCK INへ接続します。そのうえで、スレーブ側のクロックソースを外部ワードクロックへ設定します。
クロックソースやサンプルレートが一致していないと、クリックノイズや音切れなどの原因になります。接続後は、スレーブ側が正しくクロックへロックしていることを確認します。
今回使用したケーブルは鮮やかなオレンジ色なので、ラック背面でもワードクロック用ケーブルをすぐに識別できます。
音声用、クロック用、電源用のケーブルが集まるラックでは、用途ごとにケーブルの色を分けておくと、配線確認やトラブル発生時の作業が楽になります。
Rupert Neve Designs 5211を9〜10chへ接続

Rupert Neve Designs 5211は、1Uサイズの2チャンネル・マイクプリアンプです。
最大72dBのゲインに加え、スイープ可能なハイパスフィルターやSilk/Texture回路を搭載しています。
クリーンなマイクプリアンプとして使用できるだけでなく、Silk/Textureを使って出力トランスの倍音や質感を積極的に加えることもできます。
今回は5211の2チャンネルをOrion Studioへアナログで直接接続し、Orion Studioの9〜10chとして使用します。
5211の信号経路
マイク ↓ Rupert Neve Designs 5211 INPUT 1〜2 ↓ 5211 LINE OUTPUT 1〜2 ↓ 自作MOGAMI 2534 XLRケーブル ↓ Orion Studio ANALOG INPUT ↓ Orion Studio 9〜10ch ↓ DAW
5211で増幅したアナログ信号をOrion Studioへ送り、Orion Studio側でAD変換するシンプルな接続です。
ボーカルやメイン楽器など、特に音色へこだわりたいソースで積極的に使っていきます。
MOGAMI 2534でXLRケーブルを自作
5211とOrion Studioを接続するXLRケーブルは、市販品ではなく自作しました。
使用した材料は次のとおりです。
- MOGAMI 2534 White:1m×2本
- NEUTRIK NC3FXX-B XLRメスコネクター:2個
- NEUTRIK NC3MXX-B XLRオスコネクター:2個
- ハンダ
MOGAMI 2534は、スタジオやレコーディング現場で広く使われている4芯構造のマイクケーブルです。
今回は1mのケーブルを2本製作し、5211の2チャンネル分に使用しました。
ケーブルの色はホワイトを選択。ラック背面を見たときに、5211用のアナログケーブルをすぐに見分けられるようにしています。
XLRケーブルの配線
MOGAMI 2534の同色の芯線を2本ずつまとめ、次のように配線しました。
| XLRピン | 接続する線 |
|---|---|
| PIN 1 | シールド |
| PIN 2 | 青色の芯線2本 |
| PIN 3 | 透明色の芯線2本 |
最初に、NEUTRIKコネクターのブーツやチャックなど、後から通せない部品をケーブルへ通しておきます。
次にMOGAMI 2534の外皮を必要な長さだけ剥き、芯線とシールドを整えます。
芯線の被覆を剥いて予備ハンダを行い、ハンダごてを使ってXLRコネクターの各端子へ接続しました。
反対側のコネクターも同じピン番号になるように配線します。ハンダ付けの際は、芯線やコネクターの端子を長時間加熱しすぎないように注意します。
2本のケーブルが完成したら、機材へ接続する前にテスターで導通を確認します。
- PIN 1同士が接続されているか
- PIN 2同士が接続されているか
- PIN 3同士が接続されているか
- 異なるピン同士がショートしていないか
導通とショートの有無を確認してから、5211のLINE OUTPUT 1〜2とOrion Studioを接続しました。
11〜12chはOrion Studioのマイクプリを使用
今回のラックシステムは、SSL PURE DRIVE OCTOの8チャンネルと5211の2チャンネルだけではありません。
残りの11〜12chには、Orion Studio本体に搭載されているマイクプリを使用します。
Orion Studio内蔵マイクプリの信号経路
マイク ↓ Orion Studioマイク入力 ↓ Orion Studio内蔵マイクプリ ↓ Orion Studio 11〜12ch ↓ DAW
外部マイクプリアンプを経由せず、マイクをOrion Studioへ直接接続するため、追加のラインケーブルは必要ありません。
SSL、Rupert Neve Designs、Antelope Audioという異なるプリアンプを、一つのシステムで使い分けられるのも今回の構成の面白いところです。
録音する楽器やマイクとの相性、必要なチャンネル数、音作りの方向性に合わせて入力先を選択できます。
完成した12チャンネルの入力構成
すべての機材を装着し、音声ケーブルとワードクロックを接続したことで、合計12チャンネルの録音入力が完成しました。
| Orion Studio側 | 使用するマイクプリ | 接続方法 | 使用ケーブル |
|---|---|---|---|
| 1〜8ch | SSL PURE DRIVE OCTO | ADAT | ALVA OK0200PRO(BL) |
| 9〜10ch | Rupert Neve Designs 5211 | アナログXLR | MOGAMI 2534 White 1m 自作ケーブル×2本 |
| 11〜12ch | Orion Studio内蔵マイクプリ | マイクを直接接続 | 使用するマイクケーブル |
SSL PURE DRIVE OCTOは、ドラムやバンド録音など、多くのマイクを同時に使う場面で活躍します。各チャンネルのドライブモードを切り替えられるため、多チャンネル録音でも音色に変化をつけられます。
Rupert Neve Designs 5211は、ボーカルやギターなど、特に存在感やトランスの質感を加えたいソースに使用できます。
Orion Studioの内蔵マイクプリは、外部プリアンプを使用せずに素早く録音したい場合や、12チャンネルを同時に使う場合の11〜12chを担当します。
用途や音色に応じて3種類のマイクプリを使い分けられる、コンパクトながら柔軟性の高い録音システムになりました。
まとめ
今回は、ハンドルとキャスターを備えた6Uラックケース「SKB R6UW」へ、次の機材を組み込みました。
- Antelope Audio Orion Studio
- Rupert Neve Designs 5211
- SSL PURE DRIVE OCTO
- MIDDLE ATLANTIC VT1 1U放熱パネル×2枚
SSL PURE DRIVE OCTOからOrion Studioへは、ALVA OK0200PRO(BL)を使ってADAT接続。SSLの8チャンネルをOrion Studioの1〜8chへ割り当てました。
Orion StudioとPURE DRIVE OCTOのワードクロック接続には、CANARE D 3C005A-S ORANGEを使用しています。
Rupert Neve Designs 5211は、MOGAMI 2534 WhiteとNEUTRIK NC3FXX-B、NC3MXX-Bを使って製作した1mのXLRケーブル2本で接続。5211の2チャンネルをOrion Studioの9〜10chとして使用します。
さらに、Orion Studio本体のマイクプリを11〜12chとして使用することで、ラックシステム全体では合計12チャンネルのマイク入力を確保しました。
1段目と4段目にはMIDDLE ATLANTIC VT1を装着し、機材の間に放熱スペースを確保。重量のあるPURE DRIVE OCTOを下段へ配置することで、ラック全体の安定性にも配慮しています。
SKB R6UWなら、この12チャンネルの録音システムをラックごと移動できます。前後のカバーを取り付ければ、機材や端子を保護した状態で持ち運ぶことも可能です。
限られた6Uのスペースへ、放熱性、重量バランス、配線の見分けやすさまで考えて機材を配置したことで、見た目にも使い勝手にも満足できるレコーディングラックが完成しました。
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