自宅スタジオでドラムをレコーディングしていると、スネアやシンバルの音が天井や壁へ反射し、録音した音が硬くなったり、不要な響きが混ざったりすることがあります。
そこで今回は、ドラムレコーディング環境を改善するために、ロックウールを使った吸音材を自作しました。
使用したロックウールの選び方から、コットン生地で包む方法、天井への設置、壁用の木枠作りまで、実際の作業工程を順番に紹介します。
市販の吸音パネルを大量に購入すると高額になりますが、自作することで費用を抑えながら、部屋の広さや設置場所に合った吸音処理ができます。
この記事で紹介する内容
- 吸音材に使用したロックウール
- ロックウールを包む生地の選び方
- 木枠を使わない吸音材の作り方
- 天井へ吸音材を吊るす方法
- 壁用吸音パネルの木枠製作
- 吸音材設置前と設置後の違い
この吸音環境で実際にレコーディングしたドラムサウンドを使って、ドラムトラック制作を行っています。
オリジナル楽曲へのアレンジ・レコーディングをご希望の方は、こちらをご覧ください。
目次
目 次
吸音材を自作した理由
今回吸音材を設置したのは、ドラムをレコーディングしている部屋です。
ドラムは非常に音圧が高く、スネアやシンバルから出た音が天井や壁へ強く反射します。
特に天井からの反射音は、オーバーヘッドマイクへ入り込みやすく、シンバルの音が硬く聞こえたり、スネアの輪郭がぼやけたりする原因になります。
部屋全体を完全にデッドにするのではなく、録音の邪魔になる強い反射音を抑え、ドラム本来の音をマイクで捉えやすくすることが今回の目的です。
使用したロックウール

今回使用したのは、ニチアスのMGボード080です。
- 商品名:ニチアス MGボード080
- 素材:ロックウール
- 密度:80kg/m³
- 厚さ:50mm
- サイズ:605mm×910mm
- 購入数量:2箱
MGボード080は、密度80kg/m³のボード状ロックウールです。
柔らかい綿状の断熱材とは異なり、ある程度形状を保つことができるため、吸音パネルの材料として扱いやすいのが特徴です。
今回は天井と壁の両方へ設置するため、2箱購入しました。
厚さ50mmを選んだ理由
薄い吸音材は高音域には効果が出やすい一方で、中低音域には十分な効果が出にくいことがあります。
今回はスネアやシンバルだけでなく、タムやバスドラムによる部屋の響きも整えたかったため、厚さ50mmのロックウールを選びました。
さらに天井へ設置する際は、吸音材と天井の間に空間を作ることで、天井へ密着させるよりも広い帯域へ効果が出やすい構造にしています。
ロックウールを包む生地を購入

ロックウールをそのまま室内へ設置すると、表面が傷んだり、細かな繊維が落ちたりする可能性があります。
そのため、ロックウール全体を包むためのコットン生地も購入しました。
今回は、スタジオ内の壁や機材の雰囲気に合わせてブラックを選びました。
吸音材用の生地は通気性が重要
吸音材を包む生地は、色や見た目だけでなく、音や空気を通しやすいことが重要です。
表面をビニールや厚い防水素材で覆ってしまうと、音がロックウールの内部まで入りにくくなり、吸音性能を十分に発揮できない可能性があります。
そのため今回は、極端に厚くなく、ある程度通気性のあるコットン生地を使用しました。
ブラックの生地は照明の反射も目立ちにくく、レコーディングスタジオらしい落ち着いた見た目に仕上がります。
作業前に準備したもの
- ロックウール
- ブラックのコットン生地
- ハサミ
- 木工用ボンド
- 養生テープまたは仮止め用テープ
- 作業用手袋
- マスク
- 長袖の作業着
ロックウールを扱う際の注意
ロックウールを加工すると、細かな繊維が手や肌へ付着することがあります。作業時はマスク、手袋、長袖を着用し、換気しながら作業してください。
ロックウール吸音材の作り方
STEP1:ロックウールを袋から取り出す

最初にロックウールを梱包から取り出します。
今回使用したMGボード080はボード状になっているため、丁寧に扱えば形を保ったまま取り出せます。
角を強く持ったり、無理に引っ張ったりすると欠ける可能性があるため、両手で支えながら作業しました。
STEP2:ロックウールより大きめに生地を切る

ロックウール全体を包めるように、コットン生地をロックウールよりも大きめにカットします。
裏側で生地同士を重ねて固定するため、ロックウールの厚みと折り返し部分を考慮し、余裕を持たせて切るのがポイントです。
生地が小さすぎると裏側まで届かなくなるため、最初は少し大きめに切り、最後に余分な部分を調整した方が失敗しにくくなります。
STEP3:コットン生地でロックウールを包む

カットした生地の中央にロックウールを置き、プレゼントを包装するように全体を包みます。
表面に大きなシワが残らないよう、生地を軽く引っ張りながら裏側へ折り込みました。
ただし、生地を強く引っ張りすぎるとロックウールの角が潰れたり、全体が変形したりする可能性があります。
表面を整える程度の力で、少しずつ位置を調整するのがきれいに仕上げるコツです。
STEP4:裏側を木工用ボンドで固定する

生地を裏側まで折り込んだら、重なった部分を木工用ボンドで固定します。
最初に一方の生地を貼り、その上から反対側の生地を重ねるように固定しました。
角の部分も生地が大きく重なりすぎないように折り込み、必要に応じてハサミで余分な部分をカットします。
ボンドが乾くまでは生地が浮くことがあるため、テープなどで仮止めしておくと作業しやすくなります。
ボンドを大量に塗ると表側へ染み出すことがあるので、必要な部分だけに薄く塗るのがポイントです。
STEP5:ボンドが乾くまで置いておく
生地を固定したら、ボンドが乾くまで平らな場所へ置いておきます。
乾燥前に持ち上げると、生地がずれたり接着部分が剥がれたりする可能性があるため、十分に乾燥させてから移動します。
STEP6:吸音材の完成

ボンドが乾いたら、ロックウール吸音材の完成です。
ブラックのコットン生地で包んだことで、ロックウールが見えなくなり、市販の吸音パネルに近い落ち着いた外観になりました。
今回は木枠を使わず、ロックウールを直接生地で包んでいるため、天井へ設置する吸音材を比較的軽量に仕上げることができました。
天井へ吸音材を設置する
吸音材を設置する前の天井

設置前は、ドラムセットの上に吸音材がなく、天井面がそのまま露出している状態でした。
スネアやシンバルの音が天井へ直接当たり、その反射音をオーバーヘッドマイクやルームマイクが拾いやすい環境です。
そこで、ドラムセット上部を中心に、複数枚の吸音材をまとめて設置することにしました。
天井へ吊り下げ用の金具を取り付ける

天井への取り付け作業は、専門の作業ができる方にお願いしました。
天井の状態や下地の位置を確認しながら、吸音材を吊るすための金具とワイヤーを設置します。
天井施工の注意
天井への穴開けや重量物の吊り下げには、落下事故の危険があります。天井の材質や下地が分からない場合は、無理にDIYせず、施工業者や建築に詳しい方へ相談してください。
天井と吸音材の間に空気層を作る
吸音材は天井へ直接貼り付けるのではなく、ワイヤーを使って吊り下げた木材の上に並べて置いています。
天井とロックウールの間に25㎝から30㎝の空気層を作ることで、天井へ密着させた場合よりも、吸音材の効果を中低域側へ広げやすくなります。
また、必要に応じて吸音材を取り外したり、設置位置を調整したりできる点も、吊り下げ方式のメリットです。
天井への設置完了

天井の奥側から順番に吸音材を設置していきます。
吸音材同士の大きな隙間をできるだけ減らし、ドラムセット上部を広く覆うように配置しました。
最終的に、ドラムセット上部の広い範囲へブラックの吸音材を設置しました。
天井の反射面が大幅に減り、スタジオ全体の見た目も統一されました。
壁用吸音材の木枠を作る
天井用は軽量化するため木枠を使いませんでしたが、壁へ設置する吸音材には木枠を作りました。
木枠を付けることで形が安定し、壁へ吊るした際にもパネルとして扱いやすくなります。
ホームセンターで木材を購入してカット

木枠に使用する木材はホームセンターで購入しました。
ロックウールのサイズに合わせて寸法を決め、ホームセンターのカットサービスを利用して必要な長さに切ってもらいました。
あらかじめ長さを揃えてもらうことで、自宅でノコギリを使う必要がなくなり、木枠も組み立てやすくなります。
木材へ下穴を開ける
木材をビスで固定する前に、電動ドリルを使って下穴を開けます。
下穴を開けずに木材の端へビスを打ち込むと、木材が割れる可能性があります。
ビスより少し細いドリルを使い、木材の接合部分へ下穴を開けました。
ビスを使って木枠を組み立てる
下穴を開けたら、木材同士を直角に合わせ、ビスで固定します。
最初からビスを最後まで締め切るのではなく、木枠全体の形を確認しながら少しずつ締めると、歪みを抑えやすくなります。
ロックウールが木枠の中へ収まり、無理な圧力がかからないサイズになるように製作しました。
木枠へ吸音材を入れる
完成した木枠へ、コットン生地で包んだロックウールを入れます。
必要に応じて裏側から紐や薄い木材などで支え、吸音材が木枠から抜け落ちないように固定します。
吸音面を板などで塞いでしまうと、音がロックウールへ入りにくくなるため、正面はコットン生地のまま使用します。
壁へ吸音パネルを吊るす

壁用の吸音パネルは、ドラムセット周辺の反射が強い位置を中心に設置しました。
壁へ直接接着するのではなく、木枠へ吊り下げ用の金具を取り付け、壁へ掛ける方式にしています。
吊り下げ式にすることで、必要に応じてパネルを移動したり、別の場所へ設置し直したりできます。
天井と壁の両方へブラックの吸音材を設置したことで、スタジオ全体に統一感が出ました。
木枠付きの壁用パネルは形が安定しており、木枠なしの天井用パネルとは異なる設置方法にも対応できます。
吸音材設置前と設置後のサウンド比較
設置前のサウンド

設置前は、ドラムセット上部の天井が露出しており、壁にも吸音されていない面が多く残っていました。
スネアやシンバルの音が天井や壁へ直接反射し、録音へ部屋の響きが入りやすい状態です。
バスドラムの低音もかなり広がっていました!
響きがあるので実際は気持ちいいのです!
ミキシングする時は響きが無い方が仕上がりが良かったりします!
設置後のサウンド

設置後は、ドラムセット上部の天井が広い範囲で吸音材に覆われ、壁にも木枠付きの吸音パネルを追加しました。
ブラックで統一したことで、スタジオらしい落ち着いた雰囲気になり、動画撮影時の背景としてもまとまりが出ました。
サウンドも一つ一つの音像がハッキリして、他の楽器を邪魔しないパンチのある抜けの良いサウンドになりました!
吸音材を設置した効果
吸音材を設置したことで、部屋の中で感じる反射音は明らかに少なくなりました。
特にドラム周辺では、シンバルやスネアを鳴らした際に天井から返ってくる硬い響きが抑えられ、音の収まりが速くなりました。
レコーディングでは、次のような変化が期待できます。
- オーバーヘッドマイクへ入る天井反射の減少
- シンバルの硬く耳につく響きの軽減
- スネアの輪郭が捉えやすくなる
- タムの不要な共鳴や濁りの軽減
- 近接マイクとルームマイクの分離向上
- ミックス時に不要な反射音を処理しやすくなる
ただし、吸音材を増やしすぎると、高音域だけが吸われて部屋が不自然にデッドになることもあります。
一度に部屋全体を覆うのではなく、実際の録音音や残響を確認しながら、必要な場所へ少しずつ追加することが大切です。
吸音と遮音は別のもの
吸音材を設置しても、外への音漏れを完全に防げるわけではありません。
今回製作したロックウール吸音材の主な目的は、室内の反射音や残響を整えることです。
外へ漏れるドラムの音を小さくする「遮音」と、室内の響きを整える「吸音」は別の対策です。
本格的な遮音には、壁や天井の重量を増やす、隙間を塞ぐ、二重構造にするなどの建築的な施工が必要になります。
今回の吸音材は、あくまでレコーディング時の音質改善を目的として製作しています。
今回の吸音材自作で使用した材料
- ニチアス MGボード080
- 密度80kg/m³のロックウール
- ブラックのコットン生地
- 木工用ボンド
- 養生テープまたは仮止め用テープ
- ホームセンターで購入した木材
- 木ネジ・ビス
- 吊り下げ用金具
- ワイヤー
- 天井用の押さえ木材
まとめ
吸音材を自作した場合、市販の吸音材に比べ10分の1程度の費用で制作可能です!
また吸音性能においても、材質を間違えない限り市販の物以上の性能を発揮します!
今回は、密度80kg/m³、厚さ50mmのロックウールを使い、ドラムレコーディングルーム用の吸音材を自作しました。
天井用はロックウールをブラックのコットン生地で直接包み、木枠を使わず軽量に製作しています。
壁用はホームセンターで木材をカットしてもらい、ロックウールに合った木枠を作って壁へ吊り下げました。
作業工程は多く見えますが、吸音材本体はロックウールを生地で包み、裏側をボンドで固定する比較的シンプルな構造です。
天井施工については安全性を優先し、天井の構造を確認できる専門の方へ依頼することをおすすめします。
自宅スタジオやドラムレコーディングルームの反射音に悩んでいる方は、録音音を確認しながら必要な範囲へ吸音材を追加してみてください。


